HIS HISTORY
最も敬愛されるフランスの老舗ブランドのひとつ、エルメスは言わずと知れた高級品の代名詞であり、ハイクオリティーな革製品をハイファッションな服飾品で世界中にその名をとどろかせている。もともとヨーロッハ貴族向けの馬具工房として創業したエルメスは、約100年後にバッグや服飾品を扱うようになる。今や世界的ブランドの顔とも言えるシルクスカーフが発売されるまでに丸1世紀もかかっているのだ。
創始者のティエリー・エルメスは、ドイツのクレーフェルトに生まれ、1828年に家族でフランスに移住。1837年、ティエリーはパリに馬具工房を設立。早くから、ナポレオン3世と皇后ウジェニーが顧客となる。1879年終盤、ティエリーの息子シャルル - エミール ・エルメスが事業を拡張。鞍の製造を手がけながらも、フォーブル・サントノレ通り24番地に新たな店を開く。同所が今日ではエルメス本店となっている。
1914年までは、80名ほどの馬具職人が在籍。エルメスはフランスで初めてジッパーの独占使用権をし、製品に導入した先駆的企業といえる。フランスでは、エルメス・ファスナーと呼ばれるようになった。1920年代にはアクセサリー・コレクションが製作され、服飾コレクションを発表。1950年代にはブランドの転換期を迎える。パリへショッピングにきたグレース・ケリーが購入したことで、ケリー・バッグ(当時 サック・ア・デペッシュと呼ばれていた)が世界中の注目を集めるようになった。エルメスのもうひとつの傑作、バーキン・バッグは偶然の出会いから生まれた。1981年、女優・歌手のジェーン・バーキンと、当時のエルメスの社長 ジャン - ルイ・デュマが、トランスアトランティック・エアウィイズの機内で偶然隣り合わせに座ったのだ。
エルメスは製品のオリジナリティーにこだわり続けて、どんな条件で大量生産の誘いがあっても拒否していた。ほとんどの製品はフランスで職人の手によってひとつずつ作られ、全ての工程を一人の職人が行う場合も多い。流行に左右されないクラシカルなデザインのアクセサリーで知られるエルメスだが、今やスカーフから食器類まで幅広い製品を取り扱っている。おなじみのシルクスカーフは1937年にエルメス創業100周年を記念して初めて発売され、現在に至るまで作り方は全く変わっていない。一枚一枚スクリーンプリントを施し、四辺を職人が手作業でまつり縫い
をする。発売以来、デザインは2,000パターン以上にも及び、エルメスのスカーフは世界中で25秒に1枚売れていると言われている。
スカーフと共にハンドメイドの革製品でもそも名が知れ渡っている。たった1つのバッグを作るのに24時間はかかるため、シグネチャー・バッグだと半年待ちは当たり前だという商品もざらである。2004年には、バーキン・バッグ誕生20周年を祝してクロコダイルの地に、ゴールド、ダイヤモンドをあしらった8万1,000ドルも特別仕様バーキンを発売。
エルメスの服飾コレクションは2人の有名デザイナーがそれぞれ中心となって発表されてきた。マルタン・マルジェラと、ジャン - ボール・ゴルチエ。ゴルチエがエルメスを離れる際、「エルメスのデザインを手がけることは、まるで恋をしているようなものどんなすてきな恋にも必ず終わりがくるのだ」という言葉を残している。
HIS CHRONOLOGY
家族でフランスに移住
1828
最初の馬具工房をパリに設立
1837
パリ万国博覧会で賞を受賞
1855
死去。事業は息子たち、シャルル・エミールとアンドルファに引き継がれる。
1878
フォーブル・サントノレ通り24番地に本店を開く
1880
オートクチュールのバッグが作られる
1900
独占使用権を持つジッパーをフランスで初めてバッグに使用
1922
シルクスカーフが作られ、発売
1937
GALLERY

柔らかいニューグリーンのコート。正面は真っ直ぐにカットされ、バックには深いプリーツがついた シルエットが美しいスタイル。シックなアクセサリーでコーディネートされている。
ゴルチエはクラシック乗馬アイテムを −− ヴェール付きの馬術競技用ハット、レザーの小物類 −− ドレープを寄せた繊細なシフォン・トップスに合わせている。2004年。


ブランドイメージを的確に伝える為に、ゴルフをしているイラストが描かれ、スポーツ。テイストを強調した広告。1929年。
エルメスの3大人気商品 −− ケリー・バッグ、シグネチャー・バッグ・プリントのスカーフ、エレガントなレザー・グローブ −− にクローズアップした古典的な広告。

