Yves saint laurent

　非常に繊細にして多作、フレンチ・ファッションの真髄を極めながら苦悩し続けた天才であるイヴ・サンローランは、ほぼ半世紀にわたってモードの世界に君臨した孤高の帝王だった。優美なイニシャル "YSL" は、パリスタイルの象徴として世界に広まった。サンローランはスポットライトを浴びるのを嫌い、インタビューにもめったに応じず、シーズンごとのコレクションですべてを伝えようとした。相反する性質　ー 強いこだわりと神経質 ー　はクチュリエとして珍しいもので、自ら「常軌を逸した男」として評した。

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　サンローランは1953年に アルジェリアのオランからパリにやってきた。国際羊毛事務局のコンクールで優勝した後、大家クリスチャン・ディオールにスタッフとして迎えられた。ディオールの急死により、サンローランは図らずも21歳という若さで後継者となり注目を浴びる。『ル・フィガロ』紙は大見出しに「サンローランはフランスを救った」と書き立てた。

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　1962年に自身のブランドを設立し、最初から独自の道を歩む。表面上は迎合的なデザイナーの見本だが、実は現実離れした オートクチュールの世界と身近なプレタポルテの世界を股にかけたいという野望を秘めていた。彼のデザイン画は男らしさと女らしさが混合し合い、厳密な仕立てと魅惑的なディティール、手作業の縫い目と華やかなシルエットが見事に調和していた。特に画期的で海外でも絶賛されたのが、1966年に発表された、男性用のタキシードを女性用にアレンジした " スモーキング "。上流社会で自己を抑えている女性も、ストリート・ファッションをエレガントに着こなしたい女性も満足させるものだった。サンローランの生涯の友人で、長い間ミューズだったカトリーヌ・ドヌーヴ曰く「サンローランの服は 女性の人生を2倍楽しいものにしてくれる」

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　1960年代から、サンローランは愛すべきアーティストたち　ー モンドリアン、コクトー、ブラック、ヴァン・ゴッホ、ピカソ ー　の影響を受け、ファッションとアートを融合した一連の作品を発表している。1982年にはこう宣言していた。「スタイルの話題性や新しさにはもうこだわらず、完全なものだけを目指したい」。生涯にわたってサンローランのファンだったダイアナ・ヴリーランドは、彼を「世界の最新ファッションの達人」と呼んだ。1992年の回顧展について、『ニューヨーク・タイムズ』紙はサンローランの業績に最高の賛辞を寄せた。「サンローランの服の素晴らしさは、息をのむほどの美しさもさることながら、少しも古臭く見えないことだ。」

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　サンローランは2002年に引退を宣言した。最後となったオート・クチュールはパリのポンピドゥー・センターで披露され　ー 最新デザインと過去の作品が一堂に会する大スペクタクル ー　2,000人以上のファンが集まった。ジャン＝ポール・ゴルティエはサンローランの引退について次のように述べた。「伝説のデザイナーの新たな旅立ちは名残惜しい。グレタ・ガルボが引退したときも同じように感じた」